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「問題のある国も世界的評判は金で買えない」:「良い国指数」創設者サイモン・アンホルト氏

有名な「国家ブランド指数」の創設者であるサイモン・アンホルト氏。(写真:AN)
有名な「国家ブランド指数」の創設者であるサイモン・アンホルト氏。(写真:AN)
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28 Nov 2022 01:11:28 GMT9
28 Nov 2022 01:11:28 GMT9

アラブニュース

  • 国家ブランド広告キャンペーンに費やされる資金は無駄なだけでなくむしろ犯罪だとコメントした
  • カタールは推定2200億ドルをかけてサッカーワールドカップを開催しても数ヶ月を超えてイメージを高めるメリットは得られないと語った

ドバイ:大きなスポーツイベントの開催国となることが「自国への注目度を比較的短期間で高めるための現実的な方法」であることに疑問の余地はないが、データが示唆するところでは、開催国のイメージに対する持続的な影響はない。1990年代に「国家ブランド」という言葉を作った人物が指摘した。

有名な「国家ブランド指数」の創設者であるサイモン・アンホルト氏は現在、世界中の約60ヶ国の独立政策顧問を務める傍ら、人類と地球への貢献度に基づいて国をランク付けする「良い国指数」を発表している。

上述の問題に関する同氏の見解は、カタールで中東初のワールドカップが開催されている今、特に重要な意味を持つ。同国が推定2200億ドルを費やした今回の大会が成功するかについて、またリヤド、ドバイ、ドーハなどのアラブの都市が次のロンドンやニューヨークになるためには何をする必要があるかについては、多くの人が関心を持っている。

アンホルト氏は、アラブニュースの週一回のトーク番組「フランクリー・スピーキング」において次のように語った。「私がこのテーマについて20年余りにわたって行ってきた調査から得られたエビデンスが示すところでは、サッカーワールドカップや夏季オリンピックのような大きなスポーツイベントを開催・運営することは、一般的に言って、その国のイメージに影響を与えない。少なくとも数ヶ月を超えての影響はない」

「6ヶ月ほど経てば皆忘れているのだ」

「場合によっては(開催)国のイメージにかなり深刻なダメージを与えることもある。大きな論争が起こったり、人々の期待より悪いその国の事実が露呈した場合だ」

カタールについては、「実際に求めているのが単に何でもいいから認知度を上げること」であるのならワールドカップ開催のメリットがあるという。「言い換えれば、無名なこの国の存在について人々にもっと知ってもらいたいと思っているのであればということだ」

「その場合、大きなスポーツイベントの開催国となることが自国への注目度を比較的短期間で高めるための現実的な方法であることに疑問の余地はない」

「そして、開催直後から何をするのかを正しく理解し、勢いを持続させ、注目度を高く維持することができれば、もう少し洗練された戦略の一環として機能する可能性はある」

しかし、「大きなイベントの開催に成功しただけで悪かった自国のイメージが突如として良くなるとか、無名だったのが超有名になるなどと思っているとしたら思い違いだ。そのようなことは起こらない」と同氏は注意を促す。

同氏は、「大きなイベントを開催することには他にも有益な効果がある場合があり、必ずしも時間とお金の無駄ではない」ことを認める。

「特に小さなイベントを開催することは、その国が国際社会と関わるための有効な戦術的手段になり得る」

要するに、「イベント開催と国のイメージの間には単純明快な関係はなく、有害になる場合もある。最もよくあるのは何の効果もないことだ」という。

同氏は、ワールドカップでサウジアラビアがアルゼンチン戦で2対1のスリリングな勝利を収めたことや、UAEが火星ミッションを成功させていることは、PRや広告キャンペーンよりも「長期的には」国家ブランドを高めるかもしれないと語る。

「過ちは常に、即座のリターンを期待することだ。国家ブランドはメッセージではなく、メッセージが受け取られる文脈なのだ」

アンホルト氏は、ワールドカップでサウジアラビアがアルゼンチン戦で2対1のスリリングな勝利を収めたことは、PRや広告キャンペーンよりも国家ブランドを高めるかもしれないと語る。(写真:AN/Basheer Saleh)

アンホルト氏は、9月にリヤド・ブックフェアで講演した際、国家ブランド広告キャンペーンに費やされる資金は無駄なだけでなくむしろ犯罪だと発言した。

同氏は「フランクリー・スピーキング」の司会者ケイティ・ジェンセンに対し、この点について説明した。「十分な資金を投じて十分に良い広告を行えば上手くいくと言われる。しかし私に言わせれば、その方法が上手くいくのは商品やサービスを売る時であって、国のイメージを変えるのには使えない」

「あらゆるエビデンスが示すのは金の無駄だということだ。国は行ったことや作ったものによって判断されるのであって、その国が自国について言うことで判断されるのではない」

先日、サウジアラビアの首都リヤドで「世界旅行ツーリズム協議会グローバルサミット」が開催されることが発表された。これは、これからの理想的な休暇目的地として自国を売り込みたい専門家たちが世界から集まる大きな会議だ。目的地マーケティングと国家ブランドの違いについてアンホルト氏はどう見ているのだろうか。

その二つの概念は分けて考えるべきだと同氏は言う。「目的地マーケティングは非常に率直で明快なマーケティング実践だ。サウジアラビアでの休暇という商品があって、それを潜在的な観光客、すなわち潜在的な商品購入者に売り込みたいということだ」

「広告、マーケティング、オンライン、オフラインなどの従来型の商業的販売促進手段は全て非常に有効なものだ。たくさんやり上手くやれば人が来る」

「効果的なマーケティングを通して自国に訪れる人を意図的に増やすことができる。それに疑いの余地はない」

リヤド・ブックフェアに参加していたからも分かるように、アンホルト氏はリヤドが掲げる野心的な目標のいくつかについてよく知っている。2030年までに人口を2倍にすること、国内居住者と国外居住者のための雇用創出を目指すプロジェクトに多額の投資をすること、緑地をさらに拡大すること、2030年の万博の誘致を成功させることなどだ。

リヤドが魅力を高めて新たなロンドン、ニューヨーク、東京になるためにはサウジアラビアは何をする必要があるのかについて、同氏はどのように見ているのだろうか。

「リヤドを魅力的な目的地、すなわち人々が買いたくなる魅力的な商品にすることは、物事の一部でしかない」

「美しい都市があること、魅力的な目的地があること、美しい自然があること、素晴らしい文化があること、素敵な人々がいること、それらは全てその国の魅力の一部だ」

「しかし根本的に最も重要なのは、人々が来てよかったと思うことだ。それは、彼らがその国を国際社会の一員としてどのように捉えるかに関係している」

同氏は別の点にも光を当てる。国家ブランド指数で57位のサウジアラビアが、進行中の国内改革や多額の対外援助だけに基づいて国際的評判の急速な向上を期待するべきではない理由だ。

「変化は容易ではないし、すぐには訪れない。人々の頭の中を変える必要があるからだ。世界全体、あるいは国のイメージという広大な文化的構築物が相手なのだから、本当にゆっくりとしたプロセスになる」

「最初の数年間は失望が多いだろう。良かれと思ってやる事のほとんどが否定的に解釈される。しかし、戦略を持ってそれらを続ければ、そして何よりも、誠実にそれらを行えば、時と共に徐々に変わり始めるだろう」

「しかし、これは一夜にしてできることではないし、数週間や数年でも無理だ。国のイメージが形作られるには文字通り何世代もかかる。メディアを通して一日二日でできるものではなく、我々を取り巻く文化全体を通して形作られるのだ」

アンホルト氏は冗談めかして、国家ブランド指数は「これまで実施された中で最も退屈な社会調査の一つ」だと言った。前年と順位がほとんど変わらないからだ。

同氏は、UAEの火星ミッションは従来型の広告よりも同国の国家ブランドにとって有益に働いていると強調する。

「人々は国について自分が抱くイメージを全く変えようとしないからだ。それらは彼らの世界観の安定した構成要素なのだ」

同氏は、ある国のランキングが前年と比較して2ランク以上上がったのを見たことがないとして、「2~3ランク上がったり下がったりした国があるとすれば、それは本当に重要で分析の価値がある」と語った。

正にその例だが、ロシアは1年で31もランクを落としている。

同氏はこの例を取り上げ、2005年から国家ブランド指数の調査を行ってきた経験から次のように語った。「国際世論は紛争を容認しない。世界中の人々がとにかく許せないのは戦争に関与した国だ」

「宗教的集団や他の国などの別の集団に危害を加えたり脅迫したり侮辱したりした国があったとすれば、世論はその行いを理由にその国を罰するだろう」

それなら、国連によると違法に土地を占領しているが国家ブランド順位は下がっていないイスラエルはそのルールの例外なのだろうか。

同氏は、これについては説明がより複雑になると言う。「イスラエルの場合は事情が少し違う。(占領は)最近起こったことではないからだ。人々が長年見慣れている状況なのだ」

しかし、イスラエルは最下位近くにはいないが上位にもいないと同氏は指摘する。

「経済規模、成功、他の国とのつながり、それに特にアブラハム合意以降の国際社会における地位などから考えれば、もっとずっと上位に位置していてもおかしくない。だがそうなっていない」

話題はイギリスに移り、アンホルト氏は、政治の混乱は最近の世界情勢の顕著な特徴であり、「数週間ごとに首相が変わっただけではこの国のイメージに対する長期的な影響はない」と思うと言う。

ただ、イギリスのイメージはブレグジットの国民投票以来、数回の逆転を除いて低下しつつあるという。

「データが明確に示すところでは、人々がある国を尊敬する第一の理由は、人類や地球に何らかの貢献をしていると思うからというものだ」

「世界中の大半の人が理解するところでは、ブレグジットとは要するにイギリスが多国間の行動から離脱して自国だけでやっていこうとしたということだ。再び大英帝国になりたいと思ったのだ。予想通り、人々はそれを嫌っている」

米国についてはこう言う。「かつては常に1位だった。ジョージ・W・ブッシュ大統領の2期目、イラクに2度目の侵攻を行うまでは。米国は常に世界で最も尊敬される国だったのだ。今や、そんなことは決してない。7~10位に落ち着いてしまったようだ」

同氏は、イギリスと米国の例について次のように語る。「別の国に侵攻すること以外で、ある国のイメージを徐々に傷つけることのできる唯一の方法は、国際社会において執拗に、支離滅裂で乱暴で非友好的に振る舞うことだ。イギリスと米国の両国は年々そのようになってきている」

「国家ブランド指数における両国のスコアは年々落ちていっている」

最後に、今年のエリザベス女王の死去の後イギリス世論に分断が生じている中、「英国ブランド」にとって女王と君主制はどれほどの価値を持つとアンホルト氏は考えているのだろうか。

「純粋に経済的な観点から君主制を見れば、金になる非常に良い価値を提供することで役に立っている」

「王室の維持のために納税者は年に何百万も負担している。しかし、純粋なブランド価値という意味での国のイメージに対する彼らの貢献は実際のところ何十億という単位だ。人々は君主制を愛している。特に君主制の中で暮らしていない人は」

「君主制がなくなれば、人々のイギリスに対する関心は今よりも大幅に下がるだろう。歴史ある都市の歴史ある建物に人々を引き付けるのもずっと難しくなる。だから純粋に経済的な観点からは、王室は非常に良い価値を提供しているようだ。正しく振る舞っている限りは」

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